津波対策『自動車の車体を利用したイカダ』 報道で、万一の時に備え、自力で逃げることが困難な人々を、高台へ避難させようと訓練をされているボランティアの方々を知りました。でも、津波到達時間内に避難する事は非常に困難であるそうです。(その訓練では、避難に40分かかり、その地域の津波到達予想時間は地震発生の15分後とのことでした。)人助けに行かれた方まで犠牲になるのはとてもしのびないことです。もし、自力で避難が困難な方に助かる『可能性』が提供されていれば、そういった犠牲が一人でも救えるのではないか・・・そう考えているときに、津波の映像で人が乗った自動車が半分沈みながらも流されていくのを思い出しました。もしそのまま沈まなければ乗員の命は救われたはずです。廃車からエンジン等の重い部品を取り除き、発泡ウレタン等の浮力になるものを詰め込んで、万一ドアが破損して水が浸入しても、水上に残ることが出来るイカダを開発してみることになりました。 買っちゃいました!10年落ちのニュービートル。 車体価格10万円、大阪からの陸送38,000円(マフラーが無いので不動車扱い)車体はきれいでもったいない様な気がしますが、乗る人がいなくて部品取り車になっていました。なるべく年式が新しく塗装が痛んでいない安定感のある形状が選定のポイントです。 エンジン快調(爆音ですが・・・ でも、イカダにするので軽量化のため・・・近所の整備工場で、エンジンを下してもらいました。) 専用工具が必要とかで、工賃47,250円!慣れたら安くしてもらえるかな?自分でやってみるつもりでしたが(取り付けるのは無理ですが、壊すだけならできそうな・・)、陸送屋さんが、コンプライアンス上マフラーの無い車両を修理工場でないところへは運べないとのことでしたので、修理工場にお願いしました。(修理工場が休みの土曜に到着したので、結局はうちに着きました。)エンジンルームが空っぽになって地べたが見えてます。 さらに軽量化するため余計な部品は取り除きます。 ニュービートルの脱皮!丸ごと外す構造でした。(かわいそうなのでお目目は後で戻します。) 実は、ラジエターを残すかどうかで迷ったのですが、車体強度にあまり影響がなさそうなので少しでも軽くするため取り外すことに・・・脱皮が必要になり大変でした。エンジンルームには、補強のためにラリー車のサイドシルにも使用する発砲ウレタンを充填するので、強度は問題ないでしょう。浮力が十分なら無理してラジエターまで外す必要は無さそうです。 さてどのくらい軽量化できたでしょうか?前輪・後輪を少しずつ持ち上げて計量したところ、945kg以下になっている・・はずです。元が1,280kgですので、335kgくらい軽量化できた様です。完全に浸水しても沈没しない様にするには、最低1000リットルの浮きが必要になりそうです。35倍発泡の発泡ウレタンなら概算で30kg必要でしょうか。(これが意外に高価なので、なんとかコストダウンが必要です。) 当初は、エンジンルームと荷室に発泡ウレタンをつければ十分かと思いましたが、安定性を保ちながらも浮力と気密性を高められるように、床下にも10cmの発泡ウレタンを充填することにしました。コンパネの上にガラスマットを敷きその上に発泡ウレタンを充填します。ノズルから二液が混合して噴射する二液型簡易発泡ウレタンなら作業も楽なのですが・・・何しろ価格が高価(30kgで17万円弱)なので、手で撹拌するタイプ(40kgで5万円弱)を使用します。それでも高価なので、ドラム缶で買ってコストダウンが必要でしょう。今回は、4回に分けて充填していきましたが、やはりシッカリした型枠の必要性を感じます。この隙間に発泡ウレタンを流し込み膨張させます。車体との接着をより強力にするため、底面の水抜き穴のゴムキャップを取り外し、アセトンで表面を整えておきます。 反対側に漏れ出さない様にダンボールで枠を作っておきます。 隙間への充填はツールを使用する必要がありそうです。使用したのはこれらのツール(自作)です。ペットボトル:底に攪拌機が入るだけの穴を開ける。この時、キャップを開ける時に傾けても液が漏れない様底を半分くらい残しておくと作業が楽です。PPパイプ:圧縮空気で液を送り出すためのポリエチレンとスポンジ玉で造ったテルテル坊主状のものを、打ち終わった後回収できるようにPP紐で繋ぎ、空気入れ用の穴の開いた栓をします。 ①ペットボトルに2液を入れて撹拌。 ②ペットボトルで撹拌した原液を、スポンジ玉を仕込んだPPパイプに注入します。 ③圧縮空気で打ち込みます。 ④打ち終わったところです。中の液はきれいに放出され、紐でつるされたスポンジ玉が飛び出しています。 ⑤いよいよエンジンルームへの充填です。コンパネの上にポリシートで養生し、ガラスマットを敷いてFRP樹脂を塗っておきます。 ⑥充填開始!原液を計量しておきます。 ⑦開口部への投入なので、バケツとポリ袋を使用します。ポリ袋を巻き込まない様に注意しながら撹拌します。(巻き込むと悲惨なことになりそうです。) ⑧投入部へ絞り出します。 ⑨数度に分けて投入したので、折り重なるように膨れてつながっています。 ⑩半分充填したところで、万一ボンネットが開いてしまった時も発泡樹脂が車体から外れない様木材の支柱を設置します。(発泡ポリウレタンの接着力は十分強力なので必要ないかもしれません) ⑪トランクルームにも、剥離防止のため支柱を入れておきます。 ⑫エンジンルーム充填完了! ⑬トランクルーム充填完了!とりあえずはこれで浮くはずです バックドア(リアハッチ)からぶら下がっている赤い紐を引くと、ロックが解除して中からバックドアを開けることが出来ます。万一、洋上での脱出が必要な時はここから脱出してください。運転席の窓ガラスもモーターを外してあるので、手動で開け閉めすることが出来ます。 まだ表面の処理は出来ていませんが、車体下部には一面発泡ウレタンの層が出来ました。底面からの浸水防止と浮力アップが期待できます。 タイヤは水中ではバネが伸びて下ににさがります。水面下の距離が伸びるので、海まで流されない様ストッパーになるのを期待したいと思います。イカリも併用してなんとか陸地にとどまりたいものです。大規模な災害では、待てば救助が来るというのは楽観的すぎるかもしれません。 発泡ウレタンはラリー車のサイドシルなどに充填して剛性アップに使用されています。 エンジンルームとトランクルームにはパンパンに充填していますので、きっと瓦礫に揉まれても生存可能な空間を確保してくれるハズです。 シートの下等の、力のかからない部分には空のペットボトルを詰めて安価に浮力をつけたいと思います。 あとは、ポリウレタンを覆っているガラスシートにFRP樹脂をコーティングして補強すれば完成です。 でも底に塗るのは厄介なので、量産時には型枠を造ってあらかじめ底面のFRP型を作る方が良さそうです。 陸地に残るためには、念のためイカリも備えておきましょう。牽引フックからイカリ用伸縮ロープをサイドミラーまで伸ばしておきます。(サイドミラーがちぎれるかな?浮くロープなので何とか車内に引き入れられることを祈ります。) 流れが落ち着いたら窓を開けてロープを引き込みイカリを装着します。一番内陸部に入って流れが止まった時がイカリ投下のチャンスです。潮が引いて高台が近くにあれば避難しましょう。避難できそうな場所が無ければ、イカリを回収し、ロープを再設置して第2波、第3波に備え車の中で待機するのが良いかもしれません。帰る場所が無くなってしまったら雨風をしのぐのにも役だってもらいましょう。 津波対策『自動車の車体を利用したイカダ』②に続く